Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 — Preliminary Report
The RECOVARY trial
COVID-19に対するステロイド効果の論文。
うーん。
なんかなんでだろう。
COVID19にデキサメタゾンが効きそうという論文を目にして
違和感を感じます。
その違和感を言語化しますと、、
①これまでのウイルス性肺炎には効果がないことが言われている。
②敗血症とかのステロイド談議も最終的にはあまり意味なくね?的な要素がある。
③「重症になるにつれて = 人工呼吸器・ECMOになるにつれて、デキサメタゾンの効果がいい」という結果が、胡散臭い(そもそもsubgroupの結果を前面に押し出していいの?それだったら70歳未満で効く、とか、発症7日以上とかが効くというのも押し出さないと。。なんとなく相関関係がありそうなのを抜き出している感が否めない。)
まあprimary outcomeはしっかり優位差ついとるけども。
まだ結論早くね?
というのが自分的最終意見ですかね。
まあただ今後は投与することになりそうだけども。。
Case 15-2020: A 79-Year-Old Man with Hyponatremia and Involuntary Movements of the Arm and Face
亜急性進行性の低ナトリウム血症・全身倦怠感・左腕/左顔面の不随意運動を来した79歳
男性。
LGI1抗体脳炎とは、、
まあたしかに、低ナトリウム血症と不随意運動の動きがパラレルではないなと思ったけど、、MRI陰性の時になんとなく棄却してしまったな。
すこーし文献レビューしてみる。
【自己免疫性脳炎・脳症】VGKC複合体抗体関連脳症とその周辺疾患を見てみて。
VGKC脳炎って、なんていうんだろう。なんか幅を持った症候群名みたいな感じなんだね。
具体的には、4つに分類されている。
①アイザックス症候群
②モルヴァン症候群
③VGKC辺縁系脳症
④FBDS(facial brachial dyskinesia syndrome)
てか面白いのは、VGKC複合体(←これにLGI1抗体とかCaps1抗体とかが含まれているわけね)関連脳症(最初は脳炎という名前であったが、その後画像陰性ということがわかり脳症というカテゴリになった。)は、てんかん時に徐脈になったり、立毛現象が認められたり、FBDSが認められるのが特徴的みたい。
こういう特徴を持ちながらスペクトラムを持つみたいで、①筋強直・痙攣・感覚障害、②不眠・自律神経障害・疼痛、③低ナトリウム血症を伴う痙攣(部分発作:側頭葉てんかんみたいな)・進行性の認知機能障害を伴いCJDと間違えられるgroup、④FBDS(これがLGI1抗体が陽性高い。)を持つ。
ちなみにFBDSは、3秒以内で痙攣は終了し、一側上肢の不随意運動に同側顔面のしかめ面の不随意運動が同期する。これが同時に起こることもある。1 日に10~360 回起こる。意識は保たれるが、立毛現象や前兆を察知できたりする。その後脳症みたく認知機能障害に進行することがある。
疫学的には50歳以上の男性が多い。
なるほど。
まずこの症例では、低ナトリウム血症を伴うFBDSの時点で、ああ、VGKG複合体抗体関連脳症やなって思うんだな。。
これは「Autoimmune」「Functional / endocrine 」「Functional / 自律神経」みたいな疾患ですね。
まあ不眠を自律神経症状と捉えられるかはなかなかむずいな。。
The Game Is Afoot
N Engl J Med 2020;382:2249-55.
今日はLIVE形式で。
63歳女性。慢性の両側の足関節の痛みで来院した。
2年前に左脛骨を骨折し、またその保存的加療中に左大腿果を再度骨折した。
Tスコアは、大腿骨頸部で-1.9, 脊椎で0.4であった。
骨粗しょう症による骨折にしては、?という数字だし
折れるところも外傷もないのに?って感じ。
当然脆弱になる要素は探す。
続き。
患者は、乳腺癌の既往があり、乳房腫瘤摘出後に、タモキシフェンを10年前に5年間治療を完遂した。毎年1回のマンモと診察で、治療が終了するまでは特に所見は見当たらなかった。またその他子宮・卵巣卵管摘出術後で、SASもある。内服薬はビタミンD。家族歴は父が大腸癌で、母が乳がんで、どちらも80の時に骨盤骨折を起こしている、
まあカルシウムとPは見ますよね。
仮にどっちかが低いなら、VitDとPTHとFGF-23は測定するかね。
これでCa 8.6mg/dL, P 1.4mg/dL, 25(OH)D 31pg/dL, PTH 57pg/dL, 1-25(OH)VitD 14pg/dLであった。
低リン血症ですね。
多くの電解質がそうである様に、①腎性、②腎外性に分けます。これは、FEPが5%以上で①と言える。ちなみに尿は朝イチが良くて、蓄尿は食べ物の影響とか受けるから基本的にはあんましよろしくない。ノモグラムを使って、TmP/GFRとか使う人もいますよね。
さてこの症例は、FEPが30%近くあり、明らかに①腎性ということが示唆されている。腎性になる要因としては、
・PTH上昇
・FGF-23上昇
・近医尿細管障害
が挙げられる。それぞれについて解説していくと
・PTH
A:骨融解促進
B:1-25(OH)VitDをたくさん作って、腸管からのP吸収促進
C:腎臓からのP排泄亢進
A・BはPを上昇させる方向に働くが、一方で、CはPを低下させる方向に働く。なので、腎不全の時の二次性副甲状腺機能亢進症は、Cができなくなるので、A・Bも相まってPが上昇する。しかし、腎機能が正常の場合は、Pは軽度の低下としかならない。
・FGF-23の上昇
A:腎臓でのP排泄促進
B:1-25(OH)VitDを抑制する
てなわけで、FGF-23が上昇すると、
1. 低リン血症
2. 1-25(OH)VitD低下
3. PTH正常
という検査値をとる。
FGF-23があがる病態として
・腫瘍誘発性骨軟化症( tumor induced osteomalacia )
・先天性 : X染色体性低リン酸血症・常染色体優性低リン酸血症性くる病
・近位尿細管障害
A:Fanconi症候群
A-1. Fanconi症候群
・Wilson病
・骨髄腫・アミロイドーシス
・重金属(銅・鉛・カドミウム・水銀)
・発作性夜間ヘモグロビン尿症
・シェーグレン症候群
A-2. 遺伝性 : Na-Piの共輸送隊の変異で起こる高カルシウム尿症性低リン酸血症性くる病(1-25(OH)VitDの上昇、高カルシウム尿症)
この症例のポイントは、一見すると、「外傷歴のない骨折」ということで、なんとなくCaとPを測るかなって思うけど、、
もう一段階レベルupするためには、「骨痛」での鑑別が必要。
この症例で
・骨軟化症 / VitD依存性くる病
・多発性骨髄腫
・ランゲルハンス組織球症
・転移性骨腫瘍
結構この症例は検査の組み立てが難しい。
まずは、レントゲンはいくけど、その次にすんなり骨シンチいけるか?多分カルシウムとかPとか測ってPTH・VitDとって、骨軟化症・くる病っぽいなって思ったらとるかな。そしてその次にGa-Dotatate PET-CT。tumor induced osteomalaciaの時は、こっちの方が、PET-CTとかガドリニウムシンチとかより感度が高いらしい。
今回の症例は、
①骨痛の時点で、鑑別を挙げられるか?
②低リン血症の鑑別
という2点ですね。
ふむ勉強になりました。
日本内科学会雑誌 2020 5月
はい、まとめて読んでいます。
まず1例目。
ST合剤によるDHISの経過中にCMV食道炎を合併し、不幸な転帰を辿った1例
74歳女性で、BJM型のMMに対してVRD療法施行後、PCP予防でST合剤が開始された。ST合剤開始27日後から発熱・皮疹が出現し、ST終了したのにも関わらず、改善しないため、DHISと考えられ、54病日にPSL 30mgが開始された。しかしその後も皮疹が増悪し、好酸球増加・肝機能障害が進行したため、消化器内科コンサルトされた。その後は60病日にステロイドパルスを行い、改善してきたが、ステロイドパルス終了時に採血されたC7HRPが陽性であった。
ここでポイントなのが、
・DHISの自然経過と考え
ってところなんだよな。。
しかもその後第70病日に上部消化管内視鏡検査を施行したところ、食道に浅いびらんが多発していて、CMV免疫染色も陽性であり、CMV食道炎と診断したそうだ。。
いや、そもそもなぜDHISでHHV-6がre-activationするかを知らなかった。
まあ「なぜ遷延するのか?」を考えなくては駄目だった。(確かにそれがDHISの中核症状であった)
・DHISの原因薬剤の多くは、免疫抑制作用(!?)有しており、HHV-6がどこかでactivateする。
・そして、その後原因薬剤の投与中にアレルギー反応が生じ、原因薬剤が中止されると、免疫が回復し、HHV-6を叩きに行く結果、全身の症状が起こる。
まさに「免疫再構築症候群」のようだ。。(なんと得てして妙な)
この論理でいくと、CMVがDHISの経過中にactivateする理由がわかる。
Viremiaで終わればいいけど、そもそもCMVのreactivateはDHISを遷延化させたり、本症例見たく、infectionになると、、①消化性潰瘍、②肺炎、③心筋炎、④HPSみたいな症状になるそうな、、へえ。
ちょっとツッコミどころとしては、
DHISの自然経過と考え、経過観察していた
と書いてあるけど、
ならなんで測ったの?というツッコミがある。
なんとなく想定するに
①血液内科だからステロイド投与患者にC7HRPを測っていた。その日がたまたまパルスが終了する日だった。それで食道炎があって、あれ?これCMV食道炎じゃね?ってなって免疫染色の結果が出る前の内視鏡やった日からガンシクロビルを開始した。
②EGDの病理の中間報告が出て、例えばCMVも検討されますみたいなことが書いてあった時に、後から62病日にそういえば的な感じでCMV測ってたっていう感じで、Retrospectiveにみたっていう可能性。(経過表見るとこっちの方が可能性高いか?てか①ならもう食道炎を認識した時点で、開始すると思うんだよな。仮にこの報告レベルでわかっているなら)
ですね。
さて次
同種骨髄移植によって骨髄異形成症候群に伴う二次性肺胞蛋白症が軽快した1例。
二次性肺胞蛋白症の原因としては、MDSはよく上がりますね。それが、移植で良くなりましたよってこと。
ただ、この症例ですげえなと思うのは
・移植スクリーニングのCTの時に両側上葉優位の小葉間隔壁肥厚でちゃんと肺胞蛋白症が視えていたということ。
・BALまでしっかりやってるし。まさに鑑別診断の鬼。
この症例は、その状態で移植に臨んでいるという事実がすごい。
あ、後の勉強ポイントは、MDSだと造血幹細胞異常があるから、それによって肺胞マクロファージがおかしくなり、肺胞蛋白症になりそうだということが言われている。実際この肺胞マクロファージも移植後はドナー由来の肺胞マクロファージになっている。。
最後の症例
胆管炎との鑑別が困難であったFMF非典型例の1例。
おお。
症例は30歳男性で、右上腹部痛・胆道系酵素・炎症反応上昇を認め、胆管炎の暫定診断で抗菌薬が投与されたが改善せず転院した。
あーあるある。不明熱界隈で、ALP上昇して、最初は胆管炎で治療したけど、よくなりませんってやつ。
基本的には、ALP高値を示すものとして
①大血管炎
②TAFRO
③キャッスルマン
④結核
⑤微小な肝膿瘍
ですね。
しかもMRCPやCTでも肝内胆管ひらいていないし、多分送ってくる消化器内科の先生達はわかっているんですよね。これが胆管炎ではないってこと。だから送ってくるんだから。
それが文章で書いていないってだけで、我々はもっとその非言語的メッセージをもっと感じるべきだよな、とか痛感しました。
さて、もし仮にこれがpericardial effusion的になってたらなんと思うかしら
①TAFRO
③血管炎
ここにFMFが並ぶかは微妙だけどね。。
この症例で面白いのは、
・限局性腹膜炎
をきたすってこと。つまりFMFのプレゼンテーションとして、腹痛はどこにでもありってことになる。虫垂切除術が施行されてるのは、FMF界隈では良くあることと思っていたけど、まさか胆嚢摘出術まで行われているとは(つまり胆嚢の漿膜とかもFMFは犯すのかな?とか思ったり)、さらに読んでいくと、ななんと、精巣漿膜炎も起こすらしい。、
発熱は3日続いて、4週間の無症候期を経て、繰り返すというのが特徴的。
日本内科学会雑誌 2020 4月
HIVを合併し、下垂体前葉機能低下症・下垂体炎をきたした神経梅毒の1例。
31歳男性。
亜急性-慢性の頭痛・発熱で紹介受診。
身体所見で、右顔面神経麻痺と右錐体路兆候あり。
まあこの流れなら、髄液検査→MRIはやるよな。
それで、髄液で単核球優位の細胞数増加・蛋白増加、MRIで左淡蒼球・両側顔面神経・脳底部軟膜などなどに信号異常あり。
HIV陽性でRPR陽性。そして髄液もって話。
まあそうだよね。
それは調べるよねって感じ。
次
全身性毛細血管漏出症候群
おお・・・っ。
なんだこれ。初めて聞いたぞ。
69歳男性。
COPDと甲状腺機能低下症が背景にあり、今回発熱・咳嗽・両側の浸潤影で外来で抗菌薬を施行したが改善せずに入院した。
個人的に興味深い病歴としては、
・入院1年2ヶ月前にバリウム検査を行った後で血圧低下を伴わない全身浮腫と倦怠感
・入院8ヶ月前にも気管支肺炎を契機に、同様の症状がある、
そして多分重要なのはいずれも回復しているという点。
つまりここには、「妖しい繰り返すナニカ」が存在すると予測する。(まあこれの正体が全身性毛細血管漏出症なのだろうけど)
さらに、肺炎の経過はなんとなく良さそうだけど
・入院5日目に、全身倦怠感が強く、血液検査でHb 13→20, Ht 39%→55.1%、で血管濃縮にも関わらずAlb 3.4→2.5になっている。そして腎機能も一気に悪くなり、ショックになるという。
全身性毛細血管漏出症は、①前駆期→②漏出期→③回復期
① 前駆期:1-2日程度、全身倦怠感・腹痛・嘔吐・全身倦怠感・四肢の筋肉痛・多飲などの症状が出現する。
②漏出期:前駆期の1-4日後に血管外漏出が始まり、低血圧・濃縮・低アルブミン血症みたいになる。
③回復期:漏出期の数日後に回復する。この時期に管理に困るのは、volumeが一気に戻ってくるので、肺水腫・volume over loadに注意が必要である。
結構感染を契機に(up to date上だと30%くらい)起こるらしく、年間平均3回“発作"を起こすようだ。
なんとなく「血小板が下がらないTAFRO」に見えたり、「抗菌薬不応性の敗血症性ショック」みたいな感じに見えるっすね。pseudosepsisに入れたら?
Mタンパク血症・とくにIgGのκ型をもつ人が多いらしい。
3例目
消化管出血を契機に診断された健常成人に発症した腸結核の1例。
なんとなくここのポイントは
今まで元気だった40歳女性に、突然、血便が起きたということだと思うんすよね。
この年齢に、血便の原因である虚血性腸炎とか憩室出血とか起きます?
というところで、違和感を感じますよね。
多分そこで鑑別になるのが、IBDとかベーチェット病とか、エルシニア・カンピロバクター、NSAIDS起因性腸炎、アメーバ腸炎とかになるんと思うんよね。
①回盲部が最も多く、②小腸もまあまあ多い。
初見としては、①不整型潰瘍、②輪状潰瘍・輪状狭窄、③瘢痕萎縮、④腸管変形が多いらしい。
いや今回は濃厚な症例達でした。次回もまた
ただ、神経梅毒でIII, VII, VIIIがやられるのは知らなかったわ。
CIAMS - コロナのせいにしてみよう -
K先生の新刊。
てか執筆速度、化物やんけ。(Kラジオ聴きました)
CIAMSという状態を指し示す用語。
面白いですね。
個人的には、蒸発とか融解みたいなあるモノからあるモノへの変化(質的な変化)をその運動量(融点に到達させるエネルギーみたいな)も含めて指し示している概念だと思ってます。
だから病名というよりは、デジモン変化ーー的とかライザップ的な感じ(どちらかというと負のエネルギーが働いていますが)
後この本で個人的に感嘆したのは、「表現型の危うさ」のところです。
一応抜粋してみると、
表現で類推して、中で一体何が起きているのか、と考えることが臨床診断の真髄です。
しかし、この時、表現型のうちその瞬間・一時の場面のことだけを切りとって、精神疾患に見えると、そこで類推が閉じてしまいます。
ここで大事にするのが、
「普段と今のバランスが取れるか」
ということです。
周りの人からみて、普段はこんな人
医者から見て、医学的な表現型はこんなこと
そのバランスをとること。。
うーむ、面白い。
診断って「医者」がするモノだけど、多分「医者」だけでは不十分。本人の普段を評価することが大事なんすよね。これっていっつもみんなが知らないうちにやっていることだよね。
後K先生の凄いところは、
「よくこんな分類思いつくよな」っていう正直な感想です。
うーむ。精進せねば