総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

日本内科学会雑誌 2020 5月

はい、まとめて読んでいます。

まず1例目。

ST合剤によるDHISの経過中にCMV食道炎を合併し、不幸な転帰を辿った1例

74歳女性で、BJM型のMMに対してVRD療法施行後、PCP予防でST合剤が開始された。ST合剤開始27日後から発熱・皮疹が出現し、ST終了したのにも関わらず、改善しないため、DHISと考えられ、54病日にPSL 30mgが開始された。しかしその後も皮疹が増悪し、好酸球増加・肝機能障害が進行したため、消化器内科コンサルトされた。その後は60病日にステロイドパルスを行い、改善してきたが、ステロイドパルス終了時に採血されたC7HRPが陽性であった。

 

ここでポイントなのが、

・DHISの自然経過と考え

ってところなんだよな。。

 

しかもその後第70病日に上部消化管内視鏡検査を施行したところ、食道に浅いびらんが多発していて、CMV免疫染色も陽性であり、CMV食道炎と診断したそうだ。。

 

いや、そもそもなぜDHISでHHV-6がre-activationするかを知らなかった。

まあ「なぜ遷延するのか?」を考えなくては駄目だった。(確かにそれがDHISの中核症状であった)

・DHISの原因薬剤の多くは、免疫抑制作用(!?)有しており、HHV-6がどこかでactivateする。

・そして、その後原因薬剤の投与中にアレルギー反応が生じ、原因薬剤が中止されると、免疫が回復し、HHV-6を叩きに行く結果、全身の症状が起こる。

 

まさに「免疫再構築症候群」のようだ。。(なんと得てして妙な)

 

この論理でいくと、CMVがDHISの経過中にactivateする理由がわかる。

Viremiaで終わればいいけど、そもそもCMVのreactivateはDHISを遷延化させたり、本症例見たく、infectionになると、、①消化性潰瘍、②肺炎、③心筋炎、④HPSみたいな症状になるそうな、、へえ。

 

ちょっとツッコミどころとしては、

DHISの自然経過と考え、経過観察していた

と書いてあるけど、

ならなんで測ったの?というツッコミがある。

なんとなく想定するに

①血液内科だからステロイド投与患者にC7HRPを測っていた。その日がたまたまパルスが終了する日だった。それで食道炎があって、あれ?これCMV食道炎じゃね?ってなって免疫染色の結果が出る前の内視鏡やった日からガンシクロビルを開始した。

②EGDの病理の中間報告が出て、例えばCMVも検討されますみたいなことが書いてあった時に、後から62病日にそういえば的な感じでCMV測ってたっていう感じで、Retrospectiveにみたっていう可能性。(経過表見るとこっちの方が可能性高いか?てか①ならもう食道炎を認識した時点で、開始すると思うんだよな。仮にこの報告レベルでわかっているなら)

ですね。

 

さて次

同種骨髄移植によって骨髄異形成症候群に伴う二次性肺胞蛋白症が軽快した1例。

 

二次性肺胞蛋白症の原因としては、MDSはよく上がりますね。それが、移植で良くなりましたよってこと。

 

ただ、この症例ですげえなと思うのは

・移植スクリーニングのCTの時に両側上葉優位の小葉間隔壁肥厚でちゃんと肺胞蛋白症が視えていたということ。

・BALまでしっかりやってるし。まさに鑑別診断の鬼。

 

この症例は、その状態で移植に臨んでいるという事実がすごい。

 

あ、後の勉強ポイントは、MDSだと造血幹細胞異常があるから、それによって肺胞マクロファージがおかしくなり、肺胞蛋白症になりそうだということが言われている。実際この肺胞マクロファージも移植後はドナー由来の肺胞マクロファージになっている。。

 

最後の症例

胆管炎との鑑別が困難であったFMF非典型例の1例。

おお。

症例は30歳男性で、右上腹部痛・胆道系酵素・炎症反応上昇を認め、胆管炎の暫定診断で抗菌薬が投与されたが改善せず転院した。

あーあるある。不明熱界隈で、ALP上昇して、最初は胆管炎で治療したけど、よくなりませんってやつ。

基本的には、ALP高値を示すものとして

①大血管炎

②TAFRO

③キャッスルマン

結核

⑤微小な肝膿瘍

ですね。

しかもMRCPやCTでも肝内胆管ひらいていないし、多分送ってくる消化器内科の先生達はわかっているんですよね。これが胆管炎ではないってこと。だから送ってくるんだから。

それが文章で書いていないってだけで、我々はもっとその非言語的メッセージをもっと感じるべきだよな、とか痛感しました。

 

さて、もし仮にこれがpericardial effusion的になってたらなんと思うかしら

①TAFRO

悪性リンパ腫

③血管炎

 

ここにFMFが並ぶかは微妙だけどね。。

 

この症例で面白いのは、

・限局性腹膜炎

をきたすってこと。つまりFMFのプレゼンテーションとして、腹痛はどこにでもありってことになる。虫垂切除術が施行されてるのは、FMF界隈では良くあることと思っていたけど、まさか胆嚢摘出術まで行われているとは(つまり胆嚢の漿膜とかもFMFは犯すのかな?とか思ったり)、さらに読んでいくと、ななんと、精巣漿膜炎も起こすらしい。、

 

発熱は3日続いて、4週間の無症候期を経て、繰り返すというのが特徴的。