総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

The Game Is Afoot

N Engl J Med 2020;382:2249-55. 

 

今日はLIVE形式で。

63歳女性。慢性の両側の足関節の痛みで来院した。

2年前に左脛骨を骨折し、またその保存的加療中に左大腿果を再度骨折した。

Tスコアは、大腿骨頸部で-1.9, 脊椎で0.4であった。

 

骨粗しょう症による骨折にしては、?という数字だし

折れるところも外傷もないのに?って感じ。

 

当然脆弱になる要素は探す。

 

続き。

患者は、乳腺癌の既往があり、乳房腫瘤摘出後に、タモキシフェンを10年前に5年間治療を完遂した。毎年1回のマンモと診察で、治療が終了するまでは特に所見は見当たらなかった。またその他子宮・卵巣卵管摘出術後で、SASもある。内服薬はビタミンD。家族歴は父が大腸癌で、母が乳がんで、どちらも80の時に骨盤骨折を起こしている、

 

まあカルシウムとPは見ますよね。

仮にどっちかが低いなら、VitDとPTHとFGF-23は測定するかね。

 

これでCa 8.6mg/dL, P 1.4mg/dL, 25(OH)D 31pg/dL, PTH 57pg/dL, 1-25(OH)VitD 14pg/dLであった。

 

低リン血症ですね。

多くの電解質がそうである様に、①腎性、②腎外性に分けます。これは、FEPが5%以上で①と言える。ちなみに尿は朝イチが良くて、蓄尿は食べ物の影響とか受けるから基本的にはあんましよろしくない。ノモグラムを使って、TmP/GFRとか使う人もいますよね。

 

さてこの症例は、FEPが30%近くあり、明らかに①腎性ということが示唆されている。腎性になる要因としては、

 

・PTH上昇

・FGF-23上昇

・近医尿細管障害

 

が挙げられる。それぞれについて解説していくと

・PTH

A:骨融解促進

B:1-25(OH)VitDをたくさん作って、腸管からのP吸収促進

C:腎臓からのP排泄亢進

A・BはPを上昇させる方向に働くが、一方で、CはPを低下させる方向に働く。なので、腎不全の時の二次性副甲状腺機能亢進症は、Cができなくなるので、A・Bも相まってPが上昇する。しかし、腎機能が正常の場合は、Pは軽度の低下としかならない。

 

・FGF-23の上昇

A:腎臓でのP排泄促進

B:1-25(OH)VitDを抑制する

てなわけで、FGF-23が上昇すると、

1. 低リン血症

2. 1-25(OH)VitD低下

3. PTH正常

という検査値をとる。

 

FGF-23があがる病態として

・腫瘍誘発性骨軟化症( tumor induced osteomalacia ) 

・先天性 : X染色体性低リン酸血症・常染色体優性低リン酸血症性くる病

 

・近位尿細管障害

A:Fanconi症候群

 A-1. Fanconi症候群

     ・Wilson病

     ・骨髄腫・アミロイドーシス

     ・バルプロ酸

  ・重金属(銅・鉛・カドミウム・水銀)

     ・発作性夜間ヘモグロビン尿症

  ・シェーグレン症候群

 

   A-2. 遺伝性 : Na-Piの共輸送隊の変異で起こる高カルシウム尿症性低リン酸血症性くる病(1-25(OH)VitDの上昇、高カルシウム尿症)

 

 この症例のポイントは、一見すると、「外傷歴のない骨折」ということで、なんとなくCaとPを測るかなって思うけど、、

 

 もう一段階レベルupするためには、「骨痛」での鑑別が必要。

 この症例で

 

 ・骨軟化症 / VitD依存性くる病

 ・多発性骨髄腫

 ・ランゲルハンス組織球症

 ・原発副甲状腺機能亢進症

 ・転移性骨腫瘍

 

結構この症例は検査の組み立てが難しい。

まずは、レントゲンはいくけど、その次にすんなり骨シンチいけるか?多分カルシウムとかPとか測ってPTH・VitDとって、骨軟化症・くる病っぽいなって思ったらとるかな。そしてその次にGa-Dotatate PET-CT。tumor induced osteomalaciaの時は、こっちの方が、PET-CTとかガドリニウムシンチとかより感度が高いらしい。

 

今回の症例は、

①骨痛の時点で、鑑別を挙げられるか?

②低リン血症の鑑別

という2点ですね。

 

ふむ勉強になりました。