総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

一過性視力消失の原因は?

N Engl J Med 2018;378:282-9.

41歳女性。

4年前に右足と舌の発疹があり、白血球破砕性血管炎と診断され、PSLとミコフェノール酸とメトトキレセートとアザチオプリンを投与され、1回よくなるも、これらの薬剤を減量しようとすると再度皮疹が悪くなる。

その2年後くらいに頭痛があり、MRIをとってみると、右視床と右中脳にFLAIRでhighの領域を認めた。髄液検査では蛋白54mg/dLでリンパ球優位の細胞数上昇を認めた。HSVとかHIVとかクリプトとかJCウイルスとかトキソプラズマがしらべられたけどちがうだろうってことでPSL・シクロフォスファミド・リツキシマブ・ヒドロクロロキンがスタートされた。頭痛は一旦よくなり2ヶ月後にMRIを再検すると陰影は消えていた。

そしてその3ヶ月後に再度手と足と口の皮疹と関節痛を認めるようになり、リウマチ科を受診し、その時のANAが5120倍で抗Ro抗体も陽性でありSLEの診断でシクロスファミドとリツキシマブは中止の上でPSLとヒドロクロロキンとミコフェノール酸が継続された。

その後15ヶ月間くらいPSLを減らしては悪くなりをくりかえし、手足の皮疹が悪くなってきたため、PSLを増量した。その6週間の間目が5-10秒程度一時的に見えなくなることが1日に何回かあり、めまい・みみなり・頭痛が随伴症状として認められた。眼科の診察では視神経乳頭が浮腫しているのは認められたがそのほかに異常はなかった。そしてその後も皮膚初見が増悪し、右上口唇と硬口蓋に潰瘍を認めた。眼科的に再度検査が行われ視神経乳頭周囲の血管からの出血等を認めた。

血液検査もトランスとかTSHとか電解質は問題なし。

 

うーん。難しいっす。正直まったくわからない。

一過性の視野欠損っていうと血流障害を考えてしまうけど、MRI(つまりMRAもとられただろう)ではなにも言われていないってことはすごい局所的な微小な血流障害なのかあるいはMRI外のつまり外頸動脈系の障害をきたすような血管炎なのか?だけど大血管炎にしては皮疹が合わないよね。乳頭の周りで出血しているってことは、そこの血管炎なのかなとか思ったり。視神経乳頭らへんと脳の血管をやる血管炎とかあるのかな?

 

でもなんかおかしいのは、それなら皮膚の病気は治療(上のいろんな薬)をいれるとよくなることがあるのに、頭痛とか一過性の視野消失は悪くなっているということがおかしな現象にもみえる。(ただ、ステロイドふやしても皮膚病変は緩徐に増悪傾向にもみえるし)。

 

さて解答はいかに・・・

はい全然ちがいました。簡単にいうと知っているか知っていないか問題でしたが、結構その知識の中の構造が面白かったので。。

このなぞの腰をまげると頭がいたくなって、頭痛と耳鳴りと関連して一過性に視力が低下する的ななぞの病歴も、頭蓋内圧亢進に伴う乳頭浮腫ではありらしい。

 

はなしがとびましたけど、まず視神経乳頭浮腫は2つのパターンに分けられるそうです。1つはneuropathyみたいな視神経炎をきたす病態、もう1つは頭蓋内圧亢進症によるやつ。視神経炎は両方の乳頭が同じサイズで浮腫になっているっていうのは変で、視力障害とか色覚障害でて、身体初見でもrelative afferent pupillary defect(正常なほうに光をあてて、障害目のほうに光をあてると散瞳するって病態)がでる。けどこの患者はでていなくて、両側同じサイズの乳頭で、視力障害や色覚障害もない。さらにいうと盲点が大きくなる。これがほっとかれっぱなしだと、中心性視野障害と鼻側の視野障害が出現し、視力障害や色覚障害も伴うようになるという。だからこの症例は比較的はやめの症例だということ(21ヶ月前がはやいのかな?ある程度partialに治療されてよくなったって考えるほういいとおもうんだけど。つまり特発性頭蓋内圧亢進症じゃなくて、2次的な要因でそうなったとかんがえるほうがいいきがするけど)

 

なのでこの患者は頭蓋内圧を亢進するなにかがあって、視神経乳頭浮腫になりました。って感じで、それが各種症状を説明できるかどうかをチェックしている。

 

この一過性視力低下は黒内障みたいにみえるけど、これは30秒から数分は持続するらしい。なのでこれは一過性黒内障ではないよねって推論になり、腰をかがめることで視神経乳頭の浮腫が助長されて悪くなるっていう解答に至った。ちなみにこの症状は、頭蓋内圧が亢進するので耳鳴りとかもおこるでいいみたい。

 

てなわけで頭蓋内圧はなぜ亢進しているんだろうってなって、特発性 vs SLEの推論となった。最初は特発性でアセタゾラミドとかで治療していたけどよくなってるの?なっていないの?みたいな感じですすんで、最後は最初の髄液たんぱく高いし、細胞数おおいし、っていうことでSLEとPSLによる体重増加での特発性?の要素もあるっていう形で完結した。PSL sparing therapyとかつかいながら治療していましたね。

 

さて今回はながかったけど、大事なのは、

・乳頭浮腫を見たときに、乳頭炎 vs 頭蓋内圧亢進症

・頭蓋内圧亢進症のときの視力障害はかがむとわるくなったり、耳鳴りも随伴する。

・特発性頭蓋内圧亢進症は体重増加で起きるってことくらいですか。

 

なんとなくステロイドきいていないよね?膠原病じゃなくね?っていう推論は、雑なのかもしれない。たぶんそれは前提がまちがっていて免疫抑制剤が効きにくい膠原病もあるしねっていう、

たぶんこの症例で困る点としては、

ステロイドいっているのになんかよくわからないけど頭痛がひどくなり、視力障害もまがりなりにでている。

ってことだよね。

そこに時間を費やすならなにかもっと良い推論(この場合は視神経乳頭浮腫を切り口にわかる)というかいい切り口をさがすべきなんだろうな。結局しっていないとわからないけど(笑)(実際の症例じゃないとしらべないしね。)

 

なので今回はこんなところです。