総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

2型糖尿病? Case 6-2020: A 34-Year-Old Woman with Hyperglycemia

N Engl J Med 2020;382:745-53.

 

はい、というわけで。

34歳女性の高血糖

え?って感じ。ではじまりました。

 

11年前(23歳)に血糖値が126mg/dLでこのときはFPGなのか随時なのかは本人忘却の彼方。その後フォローされ、10年前(24歳)の時にFPG 112mg/dLであった。

9年前(25歳)随時血糖値が217mg/dLでこの時は多尿も認めた。HbA1cは5.8%であった。8年前(26歳)の時にもHbA1cがフォローされて、5.9%。体重72.6kgでBMIは26.6だった。境界性糖尿病と考えられ、栄養指導がはいり、6ヶ月間で4.5kg体重が減少し、A1cは5.5%であった。

 

境界性糖尿病なんじゃないの?とか思いつつ、、先を読んでいくと。

 

6年前(28歳)の時に1人目の子供を妊娠し、この時のBMIは24.5であったが、26周目の時に50gOGTTで1時間後値が186mg/dL(140mg/dL未満が正常)であり、妊娠糖尿病と診断された。食事療法とインスリン治療が開始された。子供の腹囲は75%タイルで、37週で羊水過多でった。39週に出生し、体重は3.9Kgだった。低血糖はなかった。

患者は、出産6週後に検査されFPG 120mg/dL, 75OGTT2時間値も131mg/dKであった。3ヶ月後のHbA1cも6.1%であった。

4年半前(29歳or30歳)の時に2人目の子供を妊娠した。この時はインスリン治療が行われ、低血糖症状が出現することもあった。胎児は28週時点で腹囲が35%タイルであり、38週で2.6kgで出生した。胎児血糖値は出生時には正常であった。出産6週間後のFPGは133mg/dLで、OGTT2時間値では236mg/dLであった。ここで2型糖尿病と診断されてローカーボも運動も行なっていた。

 

2年前(31or32歳)の時に3人目の子供を身篭り、この時は6週目からインスリン治療が行われた。低血糖症状のためインスリンはしばしば調整された。胎児は38週で出生し、体重は3Kgで、出生後2日目に低血糖を認めた。この頃からメトグルコが開始され最大量まで増量されたたが、HbA1cは改善しなかった。

 

1年前(32 or 33歳)のときについに4人目の子供を妊娠したが、インスリン治療が同様に行われ、羊水過多を認め、胎児は38週で3.5kgで出生した。

 

その後患者はローカーボと週に5日間の運動、さらにメトホルミンも内服はつづけており、多毛・皮膚易損傷、発汗・頻拍・頭痛・下痢、膵炎、貧血などはなかった。

 

家族歴としては、祖母が2型糖尿病で、父も高血圧症と2型糖尿病・肥満を言われている。母は肥満ではないが48歳のときに糖尿病と診断されている。患者の兄妹は糖尿とは言われていない。

 

なるほど。。

ながれとしては、

進行はしないけど、生活状況・薬剤治療を行なっているにもかかわらずmildに糖尿病がつづいている」

という状況がおかしいね。

一見、2型糖尿病ですませちゃえばいいきもするんだけど、年齢・BMIもそこまで・なおかつ軽度で進行していないという点があわない。

 

これでちょっとめずらしい糖尿病の原因に想いが馳せるわけだよね。

 

ちなみに2次性の糖尿病の原因としては、(わたしがぬける糖尿病の原因リスト)

・クッシング症候群

・褐色細胞腫

・膵嚢胞性疾患

・GH産生腫瘍

でこれについてはしっかりROS(?)かかれていたね。思い出しました。ありがとう。

 

さて、今回は

・LADA(Latent autoimmune diabetes)

がまず原因にあがっているけど、これは以下の理由で棄却されている。

①年齢(25歳以上で発症)

②ゆっくりわるくなっていく。最終的にはインスリンも必要になる。

 

んで、Monogenic diabetsにいく。これには種類があるみたいで

①MODY

②neonatal diabetes

③syndromic forms of diabetes

があるらしい。

②は6ヶ月以内に起こる。

③は他の臓器障害をきたす。

これらの点がちがくて棄却。 

 

んで

①MODYとなった。

A:GCK

B:HNF1A, HFN1B

が責任遺伝子となり、

 

GCKはその特性ゆえに進行しない。

特性っていうのは、血糖値をかんじてインスリンをだすように指示するシステムが壊れているためにインスリンがなかなかでない。だから血糖値がたかい値(100-145)を出してしまう。ただ糖尿病にならないくらいのインスリン分泌機構なので、どちらかというと境界性糖尿病が維持されるってかんじ。なので治療がいらないそうなんす。

HFN1A/Bは、FPGは正常だけど食後血糖値が高くなる。この場合は治療が必要。

 

家族歴とかこの軽度で進行しない感じが、MODYっぽいよねっていって、最終的にGCKのMODYと診断された。

 

で、この後の推論がなかなか面白くて、

高血糖の妊婦と普通の胎児→インスリン過多→胎児体重増加。

❷正常血糖の妊婦と普通の胎児→インスリン正常→胎児体重正常

高血糖妊婦とGCKが遺伝子した胎児→インスリン正常→胎児体重正常

❹正常血糖の妊婦とGCKが遺伝子した胎児→インスリン低下→胎児体重減少。

これで、最初の子は、体重多くてGCK遺伝していなさそうという推論。

2番目の子はインスリンで治療されており、低体重でうまれていたのでGCKを遺伝しているかもしれない。

なのでGCKの患者は、血糖さげたらさげたで体重がさがるし、、どっちにしたらいいかわからない。

 

むずかしいですね。

 

今回は、進行しない・軽度のっていうのがポイントでしたね。

 

結構勉強になりました。