総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

Calcium Oxalate Crystals in Ethylene Glycol Toxicity

N Engl J Med 377; 15 Oct 12, 2017

 

アルコール依存症の80歳男性。

意識障害で転倒したため来院した。

血液検査でCr 2.4mg/dL, AG 26mmol/L, 血漿浸透圧 357mOsm/kgH20, 浸透圧ギャップ 49mOsm/kgH20であった。

尿沈渣では、長方形型のシュウ酸カルシウム結晶とダンベル型のシュウ酸カルシウム結晶を認めた。これらの結晶は偏光顕微鏡では複屈折で、垂直の時は光ってみえ、水平の時は青色に見えた。

尿中シュウ酸カルシウム・AG開大性代謝性アシドーシス・浸透圧ギャップからエチレングリコール中毒を疑った。

fomepizole(アルコールデヒドロゲナーゼ阻害薬)の投与が開始され、血液透析も行われた。患者のエチレングリコール濃度は211mng/dLであった。3日間のfomepizoleの投与と5日間で4回にわたる血液透析で患者はその後意識レベル・腎機能も改善した。

 

エチレングリコール中毒は凍結防止剤などの含まれており、これらの摂取により起こる。患者は知らずにこれらを摂取していたと供述した。(ほんとかよって思うけど)

 

浸透圧ギャップについては、

Posm = 2Na + Glc/18 + BUN/2.8 

であり、実際の計算式とは10-15mOsm/kgH20ずれる。

 

浸透圧ギャップが見られる場合は、

①Naが見かけ上低値→偽性低Na血症(高蛋白・脂質異常症)

②上の式以外の蓄積(マンニトール、造影剤、アルコール、イソプロピルアルコールエチレングリコールプロピレングリコールメタノール、アセトン)

 ※特にcurableという観点からは、エチレングリコールメタノールイソプロピルアルコールは致死的になりうる。)

 ※子の中でAGが開大するのは、エチレングリコールメタノールのみ。

 

ちなみにシュウ酸はエチレングリコール代謝産物です。その他の代謝産物としてはシュウ酸・グリコール酸・その他の有機物でこいつらがAGを上昇させて、しかもTCAサイクルを抑制してしまうため、乳酸が増加する。

 

なので、尿中のシュウ酸・AG開大代謝性アシドーシス・浸透圧ギャップがあればエチレングリコールと診断できる。

 

でもこれって実際にどうやって疑うんだろう。

AG開大性代謝性アシドーシスで乳酸もたかいんだけど、尿中にシュウ酸カルシウムがあるっていうのは疑う一つのポイントかなとかおもったり。