総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

Mandell - 耐性機序 - βラクタマーゼとβラクタム系抗菌薬

ちょっと初心に帰ってGW中Mandellを読むことにしました。

 

昨日は耐性機序的なところを読んだので、そのまとめ。

 

●耐性の遺伝子学的機序

①点突然変異 : 抗菌薬が作用する部位(基質)が点突然変異を起こして作用しにくくする。

 →TEM-1・SHV-1が点突然変異をして、ESBLになる。

②逆位・重複・挿入・欠失 : 染色体上 or プラセミドのある部位の遺伝子を他の部位に移す。

 →transposons, integrons, insertion sequencesによって起こる。

③外部のDNAを持ってくる。:プラセミド・バクテロファージ・そこらへんに落ちているDNAを拾うなど。。(②に近いと思うけど。)

 →カルバペネマーゼ産生K.pneumoniae, VRSA, Daptomycin耐性S.aureus, 多剤耐性E.coli, キノロン耐性腸内細菌はプラセミドを介して伝達される。

 

遺伝子を組み込んだり・持ってくるもの

・プラセミド:染色体外にある遺伝子

・トランスポゾン:ある染色体にcodeされている遺伝子を他の染色体上に持ってくる or 染色体上の遺伝子をプラセミド上に持ってくる or その逆。

 →ex : メタロβラクタマーゼが他のGNRに移った。VanAがトランスポゾンによって腸球菌

上の染色体に組み込まれた。黄色ブドウ球菌のアミノグリコシド・βラクタムの耐性遺伝子が、連鎖球菌や腸球菌やカンピロバクターに伝達された。

・DNA integration Elements : 遺伝子カセットに載っかっている抗菌薬耐性遺伝子をDNA上に組み込む。

 

●抗菌薬への耐性機序

βラクタマーゼ

染色体上 or プラセミドに乗っている。

Ambler分類で分かれている。

 

・細菌全般

ClassA 

TEM-1 : ペニシリンとnarrow spectrum セフェムを加水分解する。

 →腸内細菌科細菌、N.gonorrhoeae, H. influenza

TEM derived ESBL:点突然変異を起こして、これになった。第三世代セフェムとアズとレオナムを加水分解する。クランブラン酸によって分解されうる。

 →E.coli, K. pneumoniae, Enterobacter aerogenes, Morganella morganii, Proteus spp., Salmonella spp.

 

SHV-1 : TEM-1と似ている。

 →K.pneumoniaeでよく見られる。

 

CTX-M : TEM-1とSHV-1とは発生学的に異なると考えられている。これはKuyvera sppの染色体上にあるAmpc遺伝子を由来としている。セフォタキシム・セフトリアキソンがセフタジジムより分解される。タゾバクタム or クランブラン酸で抑制される。ただ更なる点突然変異が起こるとセフタジジムも耐性を取られる。特に最近問題になっているのは、CTX-M-15のST131(o25:H4)である。

 

KPC : カルバペネムだけでなく、broad spectrumを持つペニシリン, セファマイシン, oxyminoセフェムが加水分解される。現在E.coliやCitrobacter, Enterobacter, Salmonella, Serratia, P. aureginosaで発見されている。

 

ClassB 

MBL : クランブラン酸・タゾバクタム・スルバクタムでも分解されない。モノバクタム以外のβラクタムに耐性を持つ。MBLは、外来の遺伝子カセットが挿入され、P.aureginosaやAcinetobacterやその他ブドウ糖非発酵菌や腸内細菌に広がる。そのためβラクタム以外の抗菌薬にも耐性を持つことが多い。

 

ClassC

AmpC : 染色体上に乗っている遺伝子で、ペニシリン・narrow spectrum セフェム系・Oximino βラクタム・セファマイシンに耐性を持ち、クランブラン酸で分解されない。

セフェピムとアズトレオナムは、加水分解されにくいが、点突然変異が起きるとセフェピムも効かなくなるかもしれない。

また、Enterobacter, Citrobacter freundii, Serratia, M. morganii, Providencia, P. aureginosaはβラクタムの存在下でAmpc産生を誘導するかもしれない。基本的にβラクタム投与が終了するとAmpcの産生は収まるが、ampDの点突然変異が起きると永久的にAmpcが産生し続ける。

腸内細菌科細菌やアエロモナスがコードしている染色体上の遺伝子から作られたと思われる、プラセミド上のAmpcがたくさんあり、これが今E.coliやK.pneumoniae, Salmonella enterica , proteus mirabillisなどにあるかもしれないと言われている。

 

ClassD

OXA : 特に緑膿菌で発現している。

OXA family in P. aureginosa : アミノペニシリン・ピペラシリン・メチシリン・narrow spectrum cephalosporins 

OXA derived in P. aureginosa : oximinino βラクタム・アズトレオナム

 

・グラム陽性球菌

 S.aureus 

黄色ブドウ球菌のβラクタマーゼはペニシリン加水分解する。

小さいプラセミドやトランスポゾンを介して伝達される。

大きいプラセミドはその他の抗菌薬の耐性遺伝子を載せているかもしれないし、また黄色ブドウ球菌間または黄色ブドウ球菌→Staphylococcus epidermitisへ伝搬されるかもしれない。

 

 Enterococci 

S.aureus由来のプラセミドを介して、βラクタマーゼを産生している。このプラセミドは、ゲンタマイシン高度耐性を有している。

 

 嫌気性菌

FusobacteriumとClostridia sppはペニシリナーゼを産生している。

Bacteroides fragilisはセフォキシチンとイミペネム加水分解するセファロスポリナーゼを有している。このセファロスポリナーゼは、クランブラン酸・スルバクタム・タゾバクタムで抑制される。

 

 βラクタマーゼがβラクタム薬に対してどのように耐性をもたらすか。

 A:抗菌薬が細菌を破壊する速度 vs βラクタマーゼ菌薬を分解する速度

 B : 菌量が多い時、抗菌薬によって細菌が破壊されると(TEM-1産生H.influenza)、内部に蓄積していたβラクタマーゼが放出されて、抗菌薬が分解されてMICが上昇する。(inoculum effect)

 C:細胞外壁と細胞内壁の間に、βラクタマーゼが産生されるため、抗菌薬が細胞外壁を抜けた後に、集中砲火を浴びる。

 D : βラクタマーゼ産生の誘導(Enterobacter spp, Pseudomonas spp)

 

◯βラクタム系抗菌薬の耐性機序

❶PBPを変化させる。

❷βラクタム系抗菌薬を破壊する。(=βラクタマーゼ)

細胞壁内の抗菌薬濃度の減少させる

 

❶PBPを変化させる。

ⅰ. モザイクのPBPを作る。

--近くの細菌の核酸を挿入する = penicillin resistant streptococcus pneumoniae 

--PBPの変異遺伝子 = ampicillin resistant βlactamase negative Haemophilus influenza

ⅱ. 新しいPBPを作る。

-- mecA = Methicillin resistant Staphylococcus aureus 

 

❷βラクタム系抗菌薬を破壊する。

i. たくさんのβラクタマーゼを作らせる。

---プロモータがたくさんあるようにする。→ プロモーターの突然変異・新たなプロモーターを挿入する。

---βラクタマーゼを制御する因子を取り払う。→ampDのように、、

 

ii. より強力なβラクタマーゼを作る。

---ESBLみたいな。

 

細胞壁内の抗菌薬濃度の減少させる

i. porinから中に入れなくする。

ii. 抗菌薬を排出させる。