総合内科医のブログ

読んだ論文をゆるくまとめて載せるブログです。二次資料として使用される場合は責任をとりかねます。またご意見・ご指摘あればよろしくおねがいします。

ステロイド治療後の発熱・急性呼吸不全・口腔内潰瘍の原因は?

N Engl J Med 2020;382:276-85.

 

64歳男性。

4ヶ月半前からの発熱・呼吸器症状があって、画像上縦隔リンパ節腫大と小葉中心性の結節影と肺底部の斑状陰影を認めた。

この間に必殺オグサワの刑でやるけど、よくならなくい。その間に溢水症状が出現し、血液検査してみるとCr 5.8くらいに。あれ?ってなって転院搬送。

補体は正常で、ANAも陰性だったけどMPO-ANCA陽性で、ステロイドパルス。同時に血漿交換も。シクロフォスファミドも投与開始された。

その後なんとか退院したけど、発熱と口腔内潰瘍と急性呼吸不全で再入院。CTで散在性のすりガラス陰影あり。

 

さてなぁんだ?

 

このoral ulcerだけがなんとなく浮いている。ANCA関連血管炎ではなんとなくおきなさそう。そしてこのステロイド治療後の増悪というこの変異点に注目して免疫不全の感染症で鑑別開始。

 

あんまりしらなかったけどクリプトコッカスってoral ulcerもあるんすね。だけど末梢血好酸球数はあがりませんよってことで除外(うーんだってこの血液検査で好酸球あがっているのって、ステロイド治療する前だけだよね?)。あとは、blastomycosisとHistoplasmaがあがるみたい。ただこれも好酸球はあがらない。

この患者が秋に旅行にいってたのは、ベントゥーラっていうロサンゼルスとサンタバーバラの間に属する郡でコクシジオイデスが流行っているみたいっす。(発症は春ですね)コクシは好酸球もあがるし、oral ulcerもあるらしい。

 

最後は残念ながらこの患者さんが亡くなって剖検となり、コクシがみつかり、腎臓ではANCA associated vasculitisってわかって診断はついたけどね。。

 

播種性コクシジオイデス症➕ANCA関連血管炎

 

全体の流れのなkで浮いたoral ulcerって症状に注目しながら、全体の流れの変異点から診断へ。

 

追記:

ヒストプラズマは、case20でもやったように、flu like symptom2-4週に自然改善することが多く、CTで多発結節・斑状の浸潤影・同測の肺門部リンパ節腫大を認めるものの、無症状というこの「解離性」を見ることがポイントであった。

 

鑑別となるのは、ブラストミセス症で、こちらもflu like symptomが自然軽快する。

ブラストミセスは、腐敗した草木・木材のような有機物の破片に富んだ温暖環境の土壌(=水辺)にいて、菌糸型の胞子を吸入することで起こる。

ヒストプラズマが一過性でほとんど終わることが多い一方で、ブラストミセスは、慢性にじんわりと全身に感染することが多い(infirtrate and granulamtous:つまりサルコイドーシスとか結核とかまたまたいってしまえばヒストプラズマと仲間的なかんじ)

画像的に鑑別するとすると、ブラストミセスはヒストプラズマと比較して、肺門のリンパ節腫大はきたさない。

肺外病変として多いのは、皮膚病変・骨関節・男性の泌尿生殖器(精巣・前立腺)がある。(コクシジオイデスと似ているな。)

CNSは稀に起こり、肉芽種性髄膜炎または占拠性病変として出現する。

 

さてここでようやくコクシジオイデスに行ける。

 

コクシジオイデスは、

C. immitis : カリフォリニア州

C. posadasii : アリゾナ州テキサス州・メキシコ・中南米

でみられる。渡航歴はひとまず抑えるべき。

 

コクシって基本的にやばい病気のイメージだけど実はそんなことなくて

 

60%が無症状・超軽微な症状

40%flu like symptom : 21日の潜伏期間の後に、発熱・筋肉痛・関節痛・食欲低下・体重減少をきたす。また、稀な症状として結節性紅斑・多形紅斑がみられる人もいる。(これは真菌感染に対する免疫応答の結果と言われている:これってヒストプラズマでもあったような)

 

検査所見では好酸球増加を認めるもある。

 

画像としては、

・薄い壁の空洞

・浸潤影の中での結節影

・著しい肺門部リンパ節腫大

 

シェロスバーグに書いてある特徴的な所見としては、「予想外」に目立つ発熱と書いてある。(この症例ではあまり使えないが)

 

播種性コクシジオイデスは、肺の次に多い病変が皮膚。骨(骨融解性)・関節(化膿性関節炎っぽい/膝関節が最も侵されやすく関節リウマチと間違われることがある)椎間板は犯されない。

後致死的なのが、CNS。肉芽種性髄膜炎が多く、脳底髄膜・上部脊髄を侵す。(脳底部の軟膜が造影MRIで光る)